WIKIによる「ガス置換包装」の説明

ガス置換包装(ガスちかんほうそう)とは、密封したプラスチックなどの包装内の空気を除去し他のガス(窒素、二酸化炭素(炭酸ガス)、酸素あるいはこれらの混合気)を充填するもの。食品の酸化防止、微生物の繁殖の抑制、静菌あるいは殺菌などを目的としています。

日本工業規格(JIS)の定義では「ガス置換包装」とは「内容物の充填時に容器から空気を吸引排気し、代わりに窒素及び二酸化炭素のような不活性ガスで置換して密封し、又は不活性ガスで強制的に容器内空気を置換して密封し、物品の変質などを防止することを目的とする包装」とされています。

飲食品のガス置換包装に使用される不活性ガスはその目的によって使い分けられており、風味維持、酸化・変色抑制には窒素ガスが、酸化抑制、カビを含む微生物や害虫の防止には炭酸ガスが、またその両方を目的とする場合は窒素ガスと炭酸ガスの混合使用、そして肉の赤みを増すためには酸素ガスを使用されることが多い。使用用途はポテトチップスなどの油菓子、削り節、洋菓子、ワイン、コーヒー豆など、広く飲食品の包装に用いられている。 また近年、コンビニエンスストアのお惣菜にも賞味期限の延長やそれに伴う食品ロスの削減(SDG12.3)のため、ガス置換包装が使用されている。

ガス置換包装は食品会社の製造・保存・包装などの工程で様々な飲食品に使用されているが、一度開封すると使用者側では空気保存となるため、近年では小型高圧ガス入り容器(ミニガスカートリッジ)の出現もあり、開封した食材や飲食品の保存、また調理品の包装や保存のため飲食店や一般家庭でも使用され始めている。


 

【空気中のガス成分の特徴】

空気中の主なガス成分は飲食品を含む固体や液体に溶けやすい順に、二酸化炭素(炭酸ガス)>アルゴン>酸素>窒素が存在します。それぞれに特徴があり、飲食品の包装や保存に使用されています。

 

窒素ガス
空気中に78%存在する気体です。古くから食品、医療、工業用として使用されています。
飲食品用としては、比重が低く飲食品にとても溶けにくいため、他の溶けやすい空気成分(二酸化炭素、アルゴン、酸素)を置換することにより、それらの空気成分による変質酸化、風味ロス、ビタミンロス、変色)やカビから守ります。多くの食品会社で、風味維持したい飲食品や油分の多い食品の包装に窒素ガス置換が持ち入れられています。

身近な食品では、ワイン、ポテトチップス、アーモンド、焙煎珈琲豆、茶葉、醤油、オリーブ油などが一般的です。ワインは製造時に窒素ガス置換することで酸化することなく、何年~何十年もゆっくりと熟成されていることからその効果は明らかと思われます。

炭酸ガス(二酸化炭素)
二酸化炭素は気体では炭酸ガス、固体ではドライアイス、水溶液では炭酸水と呼ばれています。
空気中に0.04%存在する気体です。古くから食品、医療、植物栽培、工業用と幅広く使用されています。飲食品にとても溶けやすいため、風味や色は徐々に変化します。酸化抑制に加え、空気中ガス成分では唯一高い静菌作用を持ち、真空や窒素・アルゴンなどのガス置換では抑制できなかった食中毒を含む嫌気性菌 (論文参照)や害虫を抑制、また死滅させます。

釣った魚、鮮魚、精肉、お惣菜などの調理品の包装や保存に、また野菜、果物、切り花のエチレンガス腐敗を抑制します。

飲食品容器内へのガス充てんだけでなく、コーヒーメーカーや自動販売内の食品の酸化・細菌・害虫の防止に、また冷蔵ケース内(寿司ネタ、ケーキ、フルーツ、野菜、肉、惣菜、花)に設置し、常時のガス置換に使用されています。

アルゴン
アルゴンは空気中に0.93%存在する気体です。国内では工業用として多く使用されていますが、米国では古くから飲食品の酸化抑制に使用されています。(国内では数年前に飲食品への使用承認が得られました)
飲食品に溶けやすく、酸素を奪うため酸化抑制には効果的ですが、風味や色は少しずつ影響されます。日本国内における飲食品での使用はまだ歴史が浅いため、今後、研究データが期待されます。

酸素

酸素は空気中に20.94%存在する気体で、古くから食品、医療、工業用として使用されています。固体や液体に溶けやすく酸化を導きます。ガス置換包装では肉の赤みを増すために使用されています。

備考

  • 空気中のガス成分はそれぞれ重さは異なりますが、人の住む海抜レベルでは混合された状態で存在し、引力によってガスが層をなすことは考えられません。もし層をなすなら、動物は窒息するかもしれません。
  • 「アルゴンは重いため、残ったワインの液面に浮遊するため酸素とワインの接触を防ぎ、酸化抑制し風味を守る」のようなことが都市伝説のようにワイン界で語られますが、上記同様に、ボトルの中で引力により各気体分子が層をなすことは考えにくく、もし万が一それを信じる場合、空気中の気体で最も重い二酸化炭素が液面に浮遊します。
  • そして二酸化炭素、アルゴン、酸素の順に飲料に溶け込み、変質し風味は変わります。二酸化炭素は最も溶けやすく、その溶け込みにより酸味・苦み・発泡性の増加などの変質を招きますが、その性質により、生ビールや発泡飲料は製造されます。
  • 窒素は固体や液体に溶けにくく、風味を維持できるため、ワインは製造時に窒素ガス、または窒素ガスと二酸化炭素の混合ガスが充填され、何十年もの間。オリジナル風味を維持して保存されます。
  • 食品でも同様で、風味を維持しながら酸化・変色を抑制したい食品では窒素ガス置換包装を行い、二酸化炭素、アルゴン、酸素の溶け込みによる風味や色の変化を抑えています。

 

【先進食品会社の飲食品のロングライフ化への取り組み】

SDG12.3の世界目標もあり、近年、飲食品を酸化や腐敗から守り、長期間新鮮に流通させるため、包装工程でMAPシステムなど、ガス置換包装を導入する先進食品工場が急速に増加しています。今年からいくつかのコンビニエンスストアではお惣菜にもガス置換包装を採用し、賞味期限の延長と食中毒菌を含む微生物の抑制に成功しています。

 

 

【ガス置換包装の主な目的】

  • 酸化抑制/カビや好気性菌の繁殖抑制⇒ 酸素以外の空気成分(二酸化炭素、アルゴン、窒素)で酸素を置換
  • 他の変質抑制(風味ロス・変色)⇒ 飲食品に溶けにくい窒素ガスで他の溶けやすい空気成分(二酸化炭素、アルゴン、酸素)を置換
  • 食中毒菌など嫌気性菌の繁殖や害虫の抑制⇒ 高純度炭酸ガスを充填
  • 食肉の赤身を増す⇒ 酸素を充填

食品会社で風味を維持したい製造品の包装に窒素ガス置換を使用している理由は、他の空気中のガスの溶け込みによる風味変化や変色を抑え、酸化を防止するためです。カビを含む微生物や害虫の繁殖抑制には二酸化炭素(炭酸ガス)を使用しています。

真空包装や窒素ガス置換では酸素を除去することにより、カビや好気性菌に関しては抑制できますが、ほとんどの食中毒菌は嫌気性菌(酸素なしで繁殖)のため、低温下でも増殖します。

そのため、風味や色を維持しながら、同時に酸化や細菌繁殖を抑制するため、窒素ガスと炭酸ガスのミックス置換を行う企業が増えています。近年(2020以降)、大手コンビニエンスストアではお惣菜の包装をミックスガス置換に切り替え、風味維持と酸化・細菌繁殖を抑制し、賞味期限の延長に成功しています。

 

 

【酸化防止手段の比較】

【真空包装とガス置換包装との食中毒菌の抑制比較】
食中毒菌の大半は嫌気性菌(酸素なく繁殖する細菌)のため、真空包装や窒素ガス置換ではほとんど抑制できません。
そのためコンビニエンスストアの惣菜は窒素と炭酸の混合ガス置換により包装しています。
炭酸ガスは酸化を抑制するだけでなく、カビを含む好気性菌や嫌気性菌、また害虫を抑制・殺傷する性質を有します。 

 

【ガス置換包装と脱酸素剤の併用】

ガス置換包装と鉄や活性炭を成分とする脱酸素剤との併用はお勧めしません。

食品種や用途によっては窒素、炭酸、アルゴン、酸素などを混合して使用することはあります。どの気体も日頃から体内に取り込んでいる空気成分ですので安心して併用いただけます。

ガス置換包装と鉄や活性炭を成分とする脱酸素剤との併用はお勧めできません。多くの脱酸素剤の成分(鉄・ゼオライト・食塩・活性炭)はカイロと同じです。その鉄が酸素と化学反応により酸化し、酸素を消費することにより食品側の酸化を防ぎます。

鉄は酸化時に化学反応で熱を発生するため(カイロの発熱原理)、急激な温度変化が生じます。また一般的に知られている通り、活性炭は香気を吸収します。

ガス置換包装と脱酸素剤の併用に関して、弊社では十分な安全性や効果が検証できていないため推奨できません。

そして、何よりも風味を維持しながら酸化を抑えるために窒素ガスを使用する場合、他の酸化抑制のための材料との併用、特に香気を吸収する活性炭入りの脱酸素剤との併用は避けて頂くことを推奨します。

 

ガス置換包装に関する学術論文と企業ニュ-ス←クリック

 


【ルンゴシリーズの抗酸化ガスの仕様と用途】

 

*ヴィノルンゴ、ルンゴプロとも、装着したガスカートリッジは途中で交換はできません。(取り外すと残りのガスがすべて抜けてしまいます)

 

【期待される効果】

使用法や使用効果←クリック

【残ったワインの保存効果】

 

【ワインの酸化抑制用に販売されている不活性ガス充填用商品の単価比較】

 

【焙煎コーヒー豆の保存効果】

 


 

ワイン保存の都市伝説

ワインの酸化抑制において「二酸化炭素やアルゴンは重い(比重が高い)ため、ワインボトルに注入すると、ガスは液面に浮遊し酸素と液面が接触しないため、少量のガスでも酸化抑制に効果がある」と耳にします。
実際には人の住む海抜レベルで、狭いボトル内で空気成分が引力により層を作ることは考えにくいのですが、もしもそれを信じるなら、私たちは密閉に近い個室に立っていると、空気成分の78%を占める窒素しか吸えずに、数分で窒息するかもしれません。
また仮にボトルの中で各空気成分が層を作るとしても、液面には最も重い二酸化炭素が浮遊し、その上にアルゴン、酸素の順で層ができ、そして二酸化炭素はすぐに溶け酸味を増し、その時点で飲料の風味は変わってしまいます。そして次にアルゴンが溶け、結局、酸素が液面に接触してしまいます。
飲食品の酸化抑制には、食品会社が実施しているように食品用の窒素ガスや炭酸ガスで容器内の酸素を含む空気を置換し、酸素の絶対量を減らす事、
そして、新鮮な風味を維持するためには、飲食品に溶けにくい窒素ガスで溶け安い空気成分を置換し、その絶対量を減らすことが重要と思われます。