ワインやお酒を変質・劣化させる要因には

(1)ブショネ

(2)開詮後の細菌混入と増殖

(3)温度・湿度変化と振動

(4)酸素の溶け込みによる酸化(発癌性物質の生成あり)

(5)酸素以外の空気成分の溶け込みによる風味や色艶の変質

などがあります。


(1)ブショネ

ブショネの主な原因は天然のコルクに付着した、または混入した細菌とコルク洗浄時に残された塩素の反応によって腐食している状態です。産生される2,4,6-TCAは強いカビ臭を持ち、嗅覚閾値は10ppt、ごく低濃度でも匂いを感じます。これは25mプールに2,4,6-TCAを0.005g溶かした場合に10人中9人が匂いを感じ取ることができる値です。

コルク栓の外部は過熱や酸などで殺菌されていますが、コルクの熱伝導率は低く、内部に細菌が潜んでいる可能性もあります。また手で触ってしまうと手の雑菌が付着します。

開栓後に保存する時はコルク栓を戻さず、他のキャップで栓をすることをお勧めします。

 

(2)開詮後の細菌混入と増殖

清潔な室内でもわずか10分程度で15個程度の落下細菌がボトル内に混入します。屋外ではその数十〜数百倍ですが、屋内外に関わらず、注ぐ時以外は必ずキャップをしましょう。

たとえば開栓したボトルに食中毒の起因菌のひとつの黄色ブドウ球菌が100個落下した場合、室温で22時間後には計算上では数十万個に増殖します。飲料を保存する場合は細菌が入らないように十分注意しましょう。

 

(3)温度・湿度変化と振動

ワインやお酒の保管は開栓前・後に関わらず、変化のない低温、静置保管が重要です。

開栓前のコルクワインであれば湿度管理も重要であり、高湿・低温の地下室やセラーに保管されます。(湿度70%、温度13℃が平均的です。)

飲み頃温度は人の好みによります。ただ理想で言うなら、『香りの立ちはじめを楽しみ、口に含んだ時に体温との温度差と唾液成分との接触により、口の粘膜にパーっと開く』を味わいたいものです。

それには各飲料ごとの適温空気の交じりが重要です。しかしながら、各種、最適温度のタイミングで注ぎ、飲むことはスーパーソムリエでも容易ではありません。

ワインもお酒も一般的な家庭用冷蔵庫(5~6℃)では温度が低すぎるため、そのまま飲んでしまうと豊かな広がりを味わえないため飲み頃温度まで待つ必要があります。

さらに重要なことは冷蔵庫やセラーからの出し入れにより、ワインやお酒は膨張と収縮が生じ、いちじるしく品質が低下します。

折角セラーで温度管理して保管していても、開栓後に長く室温で放置したり、また出し入れによる温度変化を繰り返すことは、開栓前の徹底した管理からはとても残念に思えます。

”保管” ⇒”開栓してベストな状態で注ぐ” ⇒”飲んでいる間の保存” ⇒”残った飲料の保管”の過程において、温度変化が少なく変動幅が小さいことはとても重要です。

 

(4)空気中成分の溶け込みによる変質(酸化、風味変化、変色)

酸化とは、対象とする物質が電子を失う化学反応で、物質に酸素が結合、または水素を奪われる反応です。多くの場合はエネルギーを放出して、腐っていく段階と考えられます。

人・鉄・食物など、すべてにおいて酸化は腐る過程であり、食品の酸化は空気に触れた瞬間から始まり、そのスピードは速く、肉や魚を温度変化の激しい室内に放置すれば、酸化が進み腐ります。切ったリンゴはあっという間に変質・変色しますがワインも同様です。

酸化したアルコールの摂取により発癌性のアセトアルデヒドが生成されるリスクは極めて高いため、できる限り避けたいものです。ワインの酸化は色や味で見極めは比較的容易ですが、日本酒やウイスキー類の酸化の見極めは難しいので要注意です。

 

(5)酸素以外の空気成分(二酸化炭素・アルゴン・酸素)の溶け込みによる風味や色艶の変質

二酸化炭素は炭素の酸化物で、気体の状態では炭酸ガス、水溶液では炭酸水、固体ではドライアイス、液体では液体二酸化炭素と呼ばれます。

二酸化炭素は主な空気中の成分の中で最も重く、固体や液体に溶け安いガスです。
重くて溶けやすい←二酸化炭素 > アルゴン > 酸素  > 窒素 →軽くて溶けにくい

溶けて吸収されると固体や液体の本来の成分構成が変わるため、変質が生じます。

生ビール、サイダー、スパークリングなどの発泡飲料には二酸化炭素(炭酸ガス)を入れ、その溶け込みにより、発泡性・酸味・苦み等の特徴が生まれます。しかしながら、ワインやお酒においては酸素による酸化ほどその影響が認知されていませんが、前述のとおり、固体や液体に溶けやすいため、オリジナルの風味は変化します。

ワインやお酒のボトル内の空気を二酸化炭素で置換すると、酸化は抑制できますが、二酸化炭素は液体に溶けるため、三叉神経を刺激し若干の苦み・酸っぱみが増します。ビールやサイダーの苦みを持った爽快感はこれに活用していますが、他の飲食品にとっては味や風味を変質させる原因のため注意が必要です。

食材をムース状にする調理法に以前は二酸化炭素が使用されていましたが、二酸化炭素は食材に浸透し味を変えてしまうため、2006年4月、亜酸化窒素(N2O)が食品添加物として認可されました。

その検討時の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会で提示された味覚試験(厚生労働省資料)ではグラフが示すように二酸化炭素を使用すると、食材の味覚は刺激・酸味・苦味が大きく増すという結果でした。

二酸化炭素は窒素の2.7倍の質量があり、単価は安くなりますが、飲食品の味や風味を変えてしまうため使用目的によっては注意が必要です。

結局、開栓後のワインの酸化や変質のリスクを長く抑えるためには(1)細菌混入リスクを避ける、(2)静置保存で温度・湿度変化を避ける、(3)固体や液体に溶けやすい空気成分(二酸化炭素・アルゴン・酸素)との接触を避ける。ということかもしれません。

 

【酸化抑制するための手段】

ガス置換型サーバーをお持ちの方

開栓した後のワインやお酒の品質の維持には”不純ガスが少ないこと”、また”安定した温度管理”にあり、窒素置換型サーバーをお持ちであれば、新鮮さ維持のため、最高純度の窒素ガスを使用されることをお勧めします。

 

装置を持たない場合の酸化抑制

いくつかの種類のグッズが販売されています。

カーボン(炭素)内蔵の酸化抑制キャップ:
ボトル内の空気中成分の酸素(O2)と内蔵の炭素(C)が二酸化炭素(CO2)を作り、液面に浮遊して酸化を抑制するキャップです。
ボトル内の空気量が少ない時点では、ある程度の酸化は抑制できると期待できます。
ただし、二酸化炭素は液体にすぐ溶け込み構成成分を変化させ酸味を増すことと、またボトル内のワイン残量が少なく、空気量が多い場合は十分な二酸化炭素(CO2)を生成できず、酸化抑制の効果に影響がでる可能性があるので注意が必要です。

窒素・二酸化炭素スプレー(75%窒素・25%二酸化炭素):
ボトル内の空気成分を置換して酸化抑制するスプレーです。窒素は空気中の78%を占めるガスで、風味や色を変化させない性質のため、ワインの製造時に使用されています。缶に詰めるには密度が低くすぎるため、量を確保するために二酸化炭素(CO2)をミックスしているのかもしれません。
ボトル内の残された空気量に合わせガスの噴射量を調整できるため、飲料の残量に関わらず酸化抑制の効果は期待できると思われます。ただし、前述同様に酸化は抑制できますが、二酸化炭素の溶け込みによる風味への影響は回避できないため、早めに消費されることをお勧めします。

アルゴンガススプレー
米国ではアルゴンガスを菓子や食品の保存に古くから使用されており、空気中成分(二酸化炭素、酸素、窒素)を置換する事で酸化を抑制します。米国では比較的安価なガスです。
ただし、アルゴンガスは二酸化炭素の次に固体や液体に溶けやすく、また酸素を吸収する性質のため、飲食品の成分構成が変化するため、風味にも影響を与える可能性があります。

そのため、風味にこだわる日本では風味や色を維持したい飲食品の酸化抑制には、高純度の窒素ガスによる”ガス置換包装”が使用されています。また世界的にワイナリーでは同じ理由でワイン製造には高純度の窒素ガスを使用しています。

バキューム
食品袋でのバキュームとは異なり、ボトルや食品容器内で真空を作ることは不可能で、容器の強度にもよりますが、空気量が30~60%減る程度と推定できます。
空気量を減らす方法では、酸化抑制効果はあまり期待できませんが、固体や液体に溶けやすい空気成分(二酸化炭素・アルゴン・酸素)のバランスよく絶対量が減るため、溶け込みによる風味への影響や酸化を遅らせる効果は期待されます。

窒素置換タイプのサーバーを使用せず風味を維持する方法としては大変おすすめと思います。

 

酸化を抑制するサーバー

ガス置換して酸化を抑制する装置は、

  1. 酸化抑制に特化した器具:
    • ワインボトルのコルクをつけたまま、ニードルを差し込み、99.0%純度の窒素、またはアルゴンガスで置換して酸化を抑制する。サーブはマニュアルで行う
  2. 酸化抑制、設定量を適温でサーブする装置:
    • 窒素ガス置換して風味を維持しながら酸化を抑制する装置、ガス圧で設定量を注ぐ
  3. 酸化抑制、設定量を適温で空気を巻き込みサーブする装置:
    • 窒素ガス置換して風味を維持しながら酸化を抑制する装置、ガス圧で設定量を注ぎ、ある程度空気を巻き込み美味しく注ぐ

コロナ影響で、人が触らずサーブできるサーバーを設置される飲食店は増えているようです。