『残ったワインに二酸化炭素やアルゴンを注入すると空気より重いので液面に浮遊し蓋になり、酸素との接触を妨げ、少量で酸化を防止してきる』
はワイン業界での都市伝説と語られています。世界の科学コミュニティ(物理学者や化学の専門家)からは完全に否定されているようです。

【気体科学の大前提】

  • 空気中の気体は各重さで層をなさない: 空気中の各気体分子は大気中では熱運動やブラウン運動によって高速(約500m/s)で動き、拡散しています。屋外・屋内・容器やボトル内でも、あとから重い気体を注入しても、各気体は重さによって層をなさず、瞬時に混ざり空気として存在します。そのためガス置換では、できる限り空気を残さない事が需要です。
  • 気体は飲食品に溶ける:  空気中の各気体は飲食品に溶けます。ヘンリーの法則にも関連しますが、20℃の水への溶けやすさはCO₂ >> Ar ≈ O2>> N₂です。気体自体が不活性であっても溶けてしまうと飲食品自体の各分子構成比率は変わり、phの変化などにより風味や色に変化をもたらします。代表的な例は二酸化炭素で酸味や苦みを増し、色も変化します。
  • もしも万が一、空気中の気体が重さで層をなすなら、人は酸素をすえなくなります。また。もしワインのボトル内で液面に気体の重さによって層を作るなら、一番重いCO2(二酸化炭素)が液面に浮遊し、すぐに溶けて風味を変えてしまいます。そしてニ番目に重いアルゴンが液面に浮遊し、次に溶けてしまいます。
  • そのため、ガス置換保存では、(1) 空気と混ざらないように勢いよく置換する気体を噴射し空気を追い出す事、(2) できる限り空気を残さず置換する事が重要です。

 


 

各種酸化・劣化抑制手段の学術的考察:

(方法1)バキューム(空気を抜く): ボトル内や食品袋内の空気全体を抜く方法。

食品袋では90%以上空気を抜き真空に近付けますが、ボトルでは方法によりますが50~70%程度の空気を抜くことは可能です。
抜かれた空気量に応じて酸素や他の気体も減少するため、抜かれた空気量に応じて酸化や他の気体の溶け込みによる変質も軽減できます。
ただし、揮発性の香り成分(アロマ)が強制的に気化し、空気と一緒に吸い出されるため用途には注意が必要です。
食品保存において効果を最大限発揮するためには、⓵用途によって適切な食品保存容器を用意する(材質によって気体や水分を透過するため(下方の”保存容器に関して”参照))、また②嫌気性菌(図参照:ボツリヌス菌などの食中毒菌)は真空状態でも繁殖するため、細菌が混入しないように食品保存容器に入れることは重要です。

 

(方法2)カーボンキャップ:活性炭内蔵のキャップにボトル内の酸素(O2)が吸着し、酸素量が減少させる帆王法。
空気中の酸素が約21%も存在するため、ワインの残量が少ない場合、小さな炭素ですべての酸素を吸着することは困難になります。飲料の残量が多い状態では効果を発揮します。飲料の残量が少なく(たとえば半分以下)なったら、できる限り早く消費すると美味しくいただけます。
なお、活性炭は酸素だけでなくアロマ化合物(エステル、テルペン、ピラディン)を吸着するため、キャップを空けたての時はアロマが消えている可能性が高いため、新しい香りが立つまで、しばらく待ってから注ぐ事は重要です。

 


 

(方法3)ガス置換:

酸素以外の気体を容器やボトル内に注入し、内部の空気を追い出し、ボトル内の空間の注入した気体以外を物理的に希釈・追い出すことです。
注入する気体の種類や質、また追い出した空気量によって効果を発揮します。

 

(3)-1: 窒素・二酸化炭素・アルゴン混合ガススプレーによるガス置換

窒素・二酸化炭素混合ガス(缶スプレータイプ):窒素(N2:約75%)、二酸化炭素(CO2:約25%)、アルゴン(Ar:含有量不明)の混合ガス(各気体の純度は不明)です。

窒素ガス75%と二酸化炭素を25%含有する混合ガス7.2g (約5ℓ)が1缶に充填されています。飲料ボトルを750mlとして約 6.6本置換できる量です。

ワインの残ったボトル内に混合ガスを注入することにより、ボトル内の空気を置換します。

缶スプレーだけで使用できるため、とても手軽です。

窒素を75%含んでいるため、置換する空気量にある程度は比例して風味維持と酸化抑制の両方に効果を発揮します。

飲食品の保存において効果を最大限発揮するためには、⓵できる限り空気を残さないよう、また注入する気体が空気と混ざる前に、スプレーの気流(勢い)で強制置換する事、②二酸化炭素は短時間で飲食品に溶けます。酸化防止には効果がありますが、溶けると飲食品自体の分子構成比率が変わり、風味(酸味の増加、アロマの変化)や色(グレーが強くなる)に影響を与える可能性がありますので、注意が必要です。なるべく早めに消費することをお勧めします。

(3)-2:アルゴンガス缶スプレーによるガス置換 :アルゴンガス単体(100%)のスプレー(アルゴンガス自体の精製純度は不明)アルゴンガス5.8g(約3.3ℓ)が1缶に充填されています。飲料ボトルを750mlとして 約4.4本置換できる量です。ワインの残ったボトル内にアルゴンガスを注入することにより、ボトル内の空気を置換します。缶スプレーだけで使用できるため、とても手軽です。飲食品の保存において効果を最大限発揮するためには、⓵できる限り空気を残さないよう、また注入する気体が空気と混ざる前に、スプレーの気流(勢い)で強制置換する事、②酸化ボ王氏には効果が高いですが、アルゴンガスは酸素と同レベルに飲食品に溶けやすいため、溶けると飲食品自体の分子構成比率が変わり、phの変化に伴い風味(アロマなど)や色に影響を与える可能性がありますので、注意が必要です。なるべく早めに消費することをお勧めします。

 

(3)-3:アルゴンガスカプセルタイプによるガス置換

アルゴンガス(カプセルタイプ):アルゴンガス単体の(アルゴンガス自体の精製純度は不明)

純度99.99%のアルゴンガス(約2. 1ℓ)が1カプセルに充填されています。飲料ボトルを750mlとして 約2本置換できる量です。

ワインの残ったボトル内にキャップにニードルを挿し込みアルゴンガスを注入することにより、ボトル内の空気を置換します。

高圧ガスを注入するための専用器具類(レギュレーターやニードルなど)が必要です。

最初から最後まで、ボトル外の空気が全く入らないため、高い酸化防止効果があります。

ただし、アルゴンガスは酸素と同レベルに飲食品に溶け易いため、溶けるとワインの分子構成比率が変わり、phの変化により風味や色に影響が生じる可能性があります。

また、注入したアルゴンガスがワインに溶けると、その容積分ボトル内が陰圧になり、コルクやコルクの穴から空気が侵入するリスクがあります。そして、ニードルを差し込むため、コルクが汚染したブショネワインでは、コルク内の細菌の持ち込みのリスクがあるため、注意が必要です。

しかしながら、メーカーで販売している特別なキャップを使用すれば、陰圧による空気の混入やコルクからの細菌の持ち込みはありません。

飲料の保存において効果を最大限発揮するためには、⓵ニードルで細菌が混入しないよう注意。②ニードルを刺す前にニードル内の空吹きにより空気やワインを抜く、③長期保存では天然コルクまたは専用キャップを使用する。アルゴンガスは酸素と同レベルに飲料に溶けるため、溶けるとボトル内が陰圧になりコルクから空気が入る可能性もあります。

 

(3)-4:高純度窒素ガスによるガス置換

 ルンゴプロ 窒素ガス:純度99.995%以上の高純度窒素ガスです。1カートリッジに17g(約14ℓ)が1カートリッジに充填されています。飲料ボトルを750mlとして約18.6本置換できる量です。

ワインの残ったボトル内に高純度の窒素ガスを注入することにより、ボトル内の空気を置換します。

高圧ガスを噴射するための専用器具類(レギュレーター(開栓器/減圧ガス噴射装置)やガス噴射ノズル)が必要です。

風味維持と酸化抑制の効果は、置換した空気の量に左右されます。

ワンプッシュ(約0.5秒)、勢いよくガスを噴射することで内部の空気を一気に追い出します。ゆっくり入れると気体のブラウン運動と拡散により空気と混ざってしまいます。

ワイナリーではボトリング時に古くから高純度の窒素ガスが使用されています(液体に溶けにくい理由で)。 開栓後も製造時の状態に少しでも近づけるため、卓上で窒素ガスによる再ガス置換を行います。

飲食品の保存において効果を最大限発揮するためには、⓵前述のようにできる限り空気を残さないよう、注入する窒素ガスが空気と混ざる前に、ワンプッシュ(0.5秒)の気流(勢い)で一気に空気を強制置換する事です。

 

(3)-5:高純度炭酸ガスによるガス置換

ルンゴプロ 炭酸ガス:高純度の炭酸ガスです。

1カートリッジに74g(約40ℓ)が1カートリッジに充填されています。飲料ボトルを750mlとして約53本置換できる量です。

ワインの残ったボトル内に高純度の炭酸ガスを注入することにより、ボトル内の空気を置換する。

高圧ガスを噴射するための専用器具類(レギュレーター(開栓器/減圧ガス噴射装置)やガス噴射ノズル)が必要です。

酸化抑制の効果は、置換した空気の量にある程度比例します。

飲食品の保存において効果を最大限発揮するためには、⓵前述のようにできる限り空気を残さないよう、注入する炭酸ガスが空気と混ざる前に、ワンプッシュ(0.5秒)の気流(勢い)で一気に空気を強制置換する事、②二酸化炭素は空気中の主な気体で最も飲食品に溶けやすいため、酸化は抑制できますが、時間の経過とともに風味(酸味や苦みの増加)や色に変化が生じます。

スパークリングや白ワインの酸化防止にはお勧めします。 また、低温下では多くの好気性菌・嫌気性菌を抑制します。加えて害虫を防止したり、エチレンガス腐敗も抑制できるため、様々な食品の保存に使用されています。


 

不活性ガス充填スプレーによるガス置換保存:

 

*ガスボンベやルンゴプロの高圧ガスを使用するためには別途ガスを減圧して出力するレギュレ-タ-(減圧ガス出力装置)が必要です。スプレ―缶の商品はそのまま使用できます。

 


 

保存容器に関して:

  • 食品、工業品に関わらず、使用する容器の素材をご確認ください。プラスチック樹脂の食品ケース、袋、ラップは水分や酸素をある程度透過します。
  • 飲食品を1週間以上の長期保存するときは遮断性の高い容器(瓶、ガラス、缶など)をご使用ください。
  • (参考) ジップロックでは袋系はポリエチレン、コンテナ系はポリプロピレンが使用されているようです。サランラップはポリ塩化ビニリデン。彊美人(真空袋)は2層構造で外側のナイロンで酸素や二酸化炭素を遮断し、内側のポリエチレンで水蒸気を遮断しているそうです。

 


 

脱酸素剤:

鉄や活性炭を使用した脱酸素剤とガス置換との併用はお勧めしません。

  • 多くの脱酸素剤の成分は鉄、活性炭、食塩、水分を含むゼオライトやバーミキュライトなど、発熱カイロと同じです。
  • 空気中の酸素と鉄の化学反応(酸化)により酸素を消費し、同梱した食品の酸化を防ぎます。
  • 鉄は酸素に触れると発熱(カイロの発熱原理)し、急激な温度変化が生じます。
  • 脱酸素剤のサイズは様々ですが、多くの食品用の脱酸素剤で開封後の作業時間(放置可能時間)は4時間に設定されています。その後は1-3日程度で鉄の酸化が飽和し、発熱が止まり、それ以上の酸素は吸収できなくなります。
  • 活性炭は酸素を誘導の役割ですが、香気も吸収します。
  • 上記の脱酸素剤は熱を嫌う食品や工業品、また風味を維持したい食品などでの使用には注意が必要です。
  • 各脱酸素剤の能力・サイズ、保存する容量、そして開封時間や使用期間にも考慮が必要と思われます。