【空気中の主な気体とその特徴】

飲食品や工業品(化学品・ゴム品・金属品など)は空気成分の溶け込みにより、変質が生じます。
酸素の溶け込みにより酸化が生じ、二酸化炭素、アルゴン、酸素、窒素の溶け込みにより風味や色が変化します。

  • 窒素は空気中成分で固体や液体に最も溶けにくいため、他の空気成分を窒素で置換して対象物を保存することにより、飲食品では風味を維持しながら酸化・変色から守り、工業品では酸化・変色から守ります。また酸素を除去するため、カビの発生を抑えます。
  • 二酸化炭素(炭酸ガス)は窒素は空気中成分で固体や液体に最も溶けやすく、他の空気成分を窒素で置換して対象物を保存することにより、飲食品や工業品を酸化から守りますが、溶け込みにより酸味や発泡性が増加します二酸化炭素はカビを含む細菌全般、また虫を抑制・死滅させる特徴があります。

例えば、飲食品でも工業品でも空気中の気体(二酸化炭素・アルゴン・酸素)の溶け込みによる変質(風味変化・変色・酸化など)を防ぐためには、固体や液体に溶けにくい高純度の窒素ガスでそれらの気体を置換するか、またはできる限り空気を抜くかが重要です。しかしながら、硬質な容器内で真空状態を作ることは困難ですので注意が必要です。

 

【飲食品の酸化防止方法の原理比較】

【各種保存方法】

保存容器に関して

  • 食品、工業品に関わらず、使用する容器の素材をご確認ください。プラスチック樹脂の食品ケース、袋、ラップは水分や酸素をある程度透過します。
  • 飲食品を1週間以上の長期保存するときは遮断性の高い容器(瓶、ガラス、缶など)をご使用ください。
  • (参考) ジップロックでは袋系はポリエチレン、コンテナ系はポリプロピレンが使用されているようです。サランラップはポリ塩化ビニリデン。彊美人(真空袋)は2層構造で外側のナイロンで酸素や二酸化炭素を遮断し、内側のポリエチレンで水蒸気を遮断しているそうです。
脱酸素剤:

鉄や活性炭を使用した脱酸素剤とガス置換との併用はお勧めしません。

  • 多くの脱酸素剤の成分は鉄、活性炭、食塩、水分を含むゼオライトやバーミキュライトなど、発熱カイロと同じです。
  • 空気中の酸素と鉄の化学反応(酸化)により酸素を消費し、同梱した食品の酸化を防ぎます。
  • 鉄は酸素に触れると発熱(カイロの発熱原理)し、急激な温度変化が生じます。
  • カイロのサイズは様々ですが、5~14時間で鉄の酸化が飽和し、発熱が止まり、それ以上の酸素は吸収できなくなります。
  • 活性炭は酸素を誘導の役割ですが、香気も吸収します。
  • 上記の脱酸素剤は熱を嫌う食品や工業品、また風味を維持したい食品などでの使用には注意が必要です。
  • 各脱酸素剤の能力・サイズ、保存する容量、そして開封時間や使用期間にも考慮が必要と思われます。

 

カーボンキャップ (炭素キャップ): 飲料の酸化抑制用 
ボトル内の空気中成分の酸素(O2)とキャップ内の炭素(C)が結合し二酸化炭素(CO2)となり、ボトル内の酸素量を減少させます。
原理的にはボトル内にごくごく微量の二酸化炭素を入れることと同様と考えられます。
ボトル内の空気量が少ない時点では、ある程度の酸化抑制は期待できるかもしれません。
ただし、二酸化炭素(炭酸ガス)は空気成分の中で固体や液体に最も溶けやすく、生ビールや炭酸水製造、また前述の試験でも示されるようにワインにすぐ溶け、発泡性・酸味・苦みを増し風味を変えてしまいます。(溶けやすさは、二酸化炭素 >> アルゴン > 酸素 > 窒素の順)
そして二酸化炭素が溶けると、液体はアルゴンや酸素と接触するため酸化も進行します。
飲料の残量が少なく、空気量が多すぎると、キャップに内蔵する炭素量では十分に酸化を抑制はできないと考えられますので、短期間での消費をお勧めします。また熟成度の高い、風味が重要な飲料でのご使用はお勧めできません。

 

バキューム:  飲料や食品の酸化抑制 
食品袋でのバキュームとは異なり、ボトルや食品容器内で真空を作ることは不可能です。ある程度(30-40%)の空気が残るため、酸化は進行するため、あまり高い酸化抑制効果は期待できないと思われます。しかしながら、飲料に溶けて風味を変質させる空気成分(二酸化炭素・アルゴン・酸素)の絶対量が減るため、風味への影響は少ないと思われますので、

風味が重要な飲料の短期の保存に向いていると思われます。

 

不活性ガス充填スプレー:


ルンゴN2 / ルンゴCO2:ルンゴガスの特徴ページをご参照ください。   

 

ガス置換用ミックススプレー (75%窒素・25%二酸化炭素): 飲料や食品の酸化抑制  

ボトル内の空気成分を置換して酸化抑制するスプレーです。窒素は空気中の78%を占めるガスで、風味や色を変化させない性質のため、ワインの製造時にも使用され、それにより何十年もの間、酸化せずセラーで保管されています。ミックススプレーは窒素だけでは容量が少ないため、その2.5倍の容量を有する二酸化炭素(CO2)がミックスされているのかもしれません??
ボトル内の残された空気量に合わせてガスの充填量を調整できるため、カーボンキャップとは異なり、飲料の残量に関わらず酸化抑制の効果は期待できると考えられます。ただし、酸化は抑制できますが、二酸化炭素の溶け込みによる風味や色への影響は回避できないため、早めに消費されることをお勧めします。

 

ガス置換用アルゴンガススプレー:  飲料や食品の酸化抑制  
米国ではアルゴンガスを菓子や食品の保存に古くから使用されており、空気中成分(二酸化炭素、酸素、窒素)を置換する事で酸化を抑制します。米国では比較的安価なガスです。
アルゴンガスは二酸化炭素の次に固体や液体に溶けやすく、溶けると内部の酸素を吸収します。そのため、酸化抑制効果は非常に高い反面、溶けて成分構成の変化による色や風味への影響が懸念されるため、早めに消費されることをお勧めします。

 

【考察

日本の歴史ある食品会社は古くから日本人のデリケートな舌を満足させるため、食材や食品の風味を守ることに長年の研究を積み重ねてきました。そのため日本には消費期限だけではなく、賞味期限が存在します。

長年の研究の結果、風味を守りながらの酸化抑制には高純度窒素ガス、カビや細菌、エチレンガス腐敗の抑制には高純度の炭酸ガス、またその両方のバランスと取りたい場合はコンビニエンスストアのお惣菜のように高純度窒素50% vs 高純度炭酸ガス50%で包装されるようになりました。

日本のポテトチップスのさらっと感は油の酸化抑制効果が高い窒素ガスと水分や他の気体を完全に遮断するアルミ包装によって実現しました。(アメリカ産のポテトチップスとは大きく異なります)。

弊社でも様々な研究の結果、日本の食品会社に習い、風味を維持したい、また変色を抑えたい飲食品(熟成ワインやお酒、深煎り焙煎豆、松茸、削り節など)の保存には高純度の窒素ガス置換を、またカビ・食中毒菌、害虫から守りたい場合は高純度の炭酸ガスで空気を置換する事を推奨します。