はじめに

空気中に存在するガス成分は様々な分野で使用されています。
安全性の高い窒素や二酸化炭素は医療や飲食品分野で長年に渡り使用されています。
飲料・食品の製造、保存、包装においては窒素ガスや炭酸ガスはなくてはならないガスです。

 

酸化防止だけでなく微生物の抑制も重要

材料を含めて飲食品を新鮮に保つためには酸化防止だけでなく、落下菌など空気中に存在する菌も要注意です。室内にはカビ菌も含めて1㎥に数百~数千の微生物が存在し、常に数十~数百の落下菌が存在します。菌種によって増殖スピードは異なりますが、朝7時にお弁当を作り、たった一つの菌が入ったとしても、午前11時には大腸菌では4,000個、腸炎ビブリオでは1,600万個に増殖します。

生食に関して厚生労働省の基準では1gに100個以内の菌の付着は許容されていますので、20gの刺身であれば2000個の菌の付着まで許容されます。ではそれをスタートとすると4時間後には前述の2000倍の菌数になってしまいます。

大事な方や自分自身のためにも食品による健康被害は避けたいものです。

 

飲食品会社での酸化防止やカビを含む微生物への対処

食品会社では飲食品の新鮮さを長く保つため、製造・保存・包装の過程で、高純度の食品用窒素ガスや食品用炭酸ガス(二酸化炭素)を空気を置換して酸化や腐敗を防止するために使用しています。

高純度の窒素ガスは比重が低く(軽い)、固体や液体に溶けにくい性質のため、飲食品の変質を抑制し、特に風味(香りや味わい)・ビタミンを維持しながらの酸化や変色の防止に使用されています。

高純度の炭酸ガスは比重が高く(重い)、固体や液体に溶けやすいため、飲食品に酸味、苦み、発泡性をもたらします。しかしながら、他のガスと比較して非常に安価であること、そして静菌作用、防虫・防カビに高い効果を発揮するため、酸化や腐敗の防止を目的として多くの食品で使用されています。またその性質によりビールや発泡飲料の製造に使用されています。

 

食品会社における窒素ガスと炭酸ガスの代表的な使用用途
ワイン保存の都市伝説

ワインの酸化抑制において「二酸化炭素やアルゴンは重い(比重が高い)ため、ワインボトルに注入すると、ガスは液面に浮遊し酸素と液面が接触しないため、少量のガスでも酸化抑制に効果がある」と耳にします。
実際には人の住む海抜レベルで、狭いボトル内で空気成分が引力により層を作ることは考えにくいのですが、もしもそれを信じるなら、私たちは密閉に近い個室に立っていると、空気成分の78%を占める窒素しか吸えずに、数分で窒息するかもしれません。また仮にボトルの中で各空気成分が層を作るとしても、液面には最も重い二酸化炭素が浮遊し、その上にアルゴン、酸素の順で層ができ、そして二酸化炭素はすぐに溶け酸味を増し、その時点で飲料の風味は変わってしまいます。そして次にアルゴンが溶け、結局、酸素が液面に接触してしまいます。飲食品の酸化抑制には、食品会社が実施しているように食品用の窒素ガスや炭酸ガスで容器内の酸素を含む空気を置換し、酸素の絶対量を減らす事、そして、新鮮な風味を維持するためには、飲食品に溶けにくい窒素ガスで溶け安い空気成分を置換し、その絶対量を減らすことが重要と思われます。